SHIROGANE 2008 Cultural asset_Shirogane_Tokyo

OVERVIEW
Use :
Private school
Size :
10000 ㎡
Type :
Renovation
POSITION
architect / contractor / project manager / construction manager / artisan

文化財校舎の維持再生

築100年の建築群の長期改修計画を支える教育理念

Cultural asset_Shirogane_Tokyo
Cultural asset_Shirogane_Tokyo
Cultural asset_Shirogane_Tokyo
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Cultural asset_Shirogane_Tokyo

建築を通じて行われる教育、文化の創造

伝統と格式において、日本随一のプライベートスクールは、その改修計画においても、教育理念の実現に妥協が無い。

都内でも有数の広大な敷地には、数多くの建物があり、築100年の本校舎や聖堂を中心として、連続した改修作業が行われていく。

この計画についての前置きとして、こうした古い文化財建築の改修全般について、少し話をしてみたい。実際このような仕事をいくつか経験させて貰ったが、あまり一般的には知られていない事として、実は詳細な設計図が存在しない場合が少なくない。または設計図と実物が異なっているという場合も多い。設計図が完備されていて実物もその通りに出来上がっているのが当たり前という常識は、こうした建物の改修計画では通用しない。当然、計画に先立ち、十分な事前調査を行うが、現実的な時間の制約もある中での作業であり、実際の現場では、想定外の状況に向き合う場面も少なからずある。新築より改修の方が難しいという建築業界の常識は、こうした事実が背景にあり、実際の現場では、建築技術者としての経験と実力が大きく問われることになる。既に存在している建築物の建設当時の歴史的な背景も含めて、その特性をいかに理解し把握出来るかが、重要な鍵だ。

話をこの計画に戻そう。この仕事において特筆すべき点が三つある。一つは、意匠上の見た目の変更は一切行わないという基本方針だ。時代の変化に対応していくための様々な工夫や最新の技術を目に見えない形で積極的に取込みながら、思想的な言語でもある建築デザインには一切の変更を加えないという方針は、カトリックの精神とも重なり大変に興味深い。

二つには、資材の徹底した再生だ。以前の改修工事で撤去された資材が、実は敷地内に大量に保管されている。経済という物差しで考えれば、そうした資材の再生というのは、多くの時間を必要とするため、新設する場合に比べて、より多くの費用が必要になる場合も多い。それでも、そうした方針を大切にするのには、確固とした教育理念が根本にあるためだ。

使えるものは、愛情と手間を掛けて大切に使い続けるという姿勢は、全てを金銭的な物差しのみで判断する風潮とは明らかに一線を画しており、良い意味での格式と伝統が今だに息づいているのを感じる。建築資材の扱い一つでも、このように学校の姿勢というものが、垣間見える。そうした細微に渡る判断を実際におこなうのは、理事を始めとした教員や保護者であり、そうした姿勢がいずれ教育という現場を通じて、あらゆる場面で生徒に間違いなく伝播していくという透徹した哲学が、ここにはある。

三つには、この建物には現在では失われつつある職人技が、あらゆるディテールに遺憾無く発揮されている。時代は常に変わりゆく中で、そうした物を全て保存し再生維持していくことが正しいとは思わないが、そうした職人技には、独特の魅力があり、生きていくために必要かどうかという判断とは別に、現場は喜びと驚きに満ちていた。その空間は、校舎の修繕工事というよりも、建築を通じた歴史の学びの場のようだった。

いつまでも変わらぬ伝統を受け継いでいくために、新たな技術やアイデアをしなやかに取り入れながら、計画は黙々と進んでいく。

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